[自殺対策] 地域介入研究と救急介入研究の成果で、今後の自殺防止対策や自殺率減少への期待
[厚生労働科学研究における戦略研究-自殺対策のための戦略研究―厚生労働省(H25.9.6)]
精神科医療行政ニュース - 2013年 09月 13日
厚生労働省は、わが国の厚生労働政策における国民的課題を解決するために実施する大規模なアウトカム研究として平成17年度から、「厚生労働科学研究における戦略研究」に取り組んでいます。9月6日、「自殺対策のための戦略研究」の成果報告会が行われました。
報告内容は、(1)複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究 (NOCOMIT-J)(2)自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネジメントの効果:多施設共同による無作為比較研究(ACTION-J)、の2つです。
(1)では、わが国の自殺死亡者は、平成24年に3万人を下回ったものの高い水準を推移していることから、約15秒に1人が死亡しており交通事故死の約6倍の頻度であること、自殺死亡率はG7でワースト1位であることを紹介し、「自殺率の減少に向けた取組は安心・安全な社会を構築するために重要かつ緊急の課題」であると述べています。
地域介入研究(NOCOMIT-J)では、長年にわたって自殺死亡率が高い地域において、1次から3次までのさまざまな自殺予防対策を組み合わせた新しい複合的自殺予防対策プログラムを介入地区で実施し、通常の自殺予防対策を行う対象地区と比較して、効果があるかどうかを検討しています。
一方、(2)では、消防庁の救急・救助の現況から、平成22年における自損行為の状況について、救急自動車の出動件数は7万3570件であることを報告。救急搬送における中等症以上の自損は、自傷行為ではなく、自殺企図である可能性が高いと分析しています。また、救命された自殺企図者への調査に基づく自殺企図前の精神障害有病率についても報告しています。
救急介入研究(ACTION-J)では、救命救急センターを受診する自殺企図者を対象に、精神医学的評価と心理教育、複合的なケース・マネージメントを行い、通常介入と比較して、効果があるかどうかを検証しています。
地域介入研究(NOCOMIT-J)、救急介入研究(ACTION-J)の成果としては、政策立案に直結する研究体制のモデルとなったとしています。また、精神・神経科学振興財団や国立精神・神経医療研究センターによる専門的支援や、研究者から独立したデータマネージメント、厳格な研究倫理審査体制の整備など、アウトカム研究の基盤が形成された、と報告されています。このほか、米国や日本において臨床試験登録を実施し、研究プロトコルを学術論文として公表していることや、類例をみない大規模研究として国際学会などでも高い注目をあびていることなどが紹介されました。
資料には、「地域における自殺対策プログラム」と「先行的取り組み地域の事例」が掲載されていますので、ご参照ください。