[診療報酬] 費用対効果評価、具体例に基づく論議等を中医協委員は要望

[中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会(第13回 9/4)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 09月 04日

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 厚生労働省は9月4日に、中医協の費用対効果評価専門部会を開催した。
 この日は、厚労省当局から「議論の中間的な整理」案が示され、これに基づいた議論を行った。
 
 中医協の森田会長による「保険財政が厳しくなる中では、新規の医療技術導入にあたって費用対効果を考慮する必要もあるのではないか」との言葉に端を発し、専門部会が設置された。部会では、費用対効果評価の導入について12回にわたり検討・議論を重ねてきた。
 
 今回の中間的整理では、費用対効果評価の仕組みについて次のように整理している。
(1)対象技術に関しては、(i)希少疾病は対象としない(ii)代替性のある他の医療技術が存在する(iii)代替する医療技術と比較して、有用性の観点から財政影響が大きい可能性がある(iv)安全性・有効性等が一定程度確立している―ことを原則とする(p4参照)(p31参照)
 
(2)費用対効果評価の大きな枠組みは、(i)分析(assessment、投下費用と得られる効果についてデータを用いて分析する)(ii)評価(appraisal、幅広い社会的側面等も考慮し、(2-i)で得られた結果を解釈する)(iii)意思決定(decision)―の3段階で検討する(p6参照)(p34〜p35参照)
 
(3)効果指標の取扱いについては、英国で用いられているQALY(質調整生存年)や、生存率、治癒率、重症度などさまざまなものがあるが、それぞれにメリット・デメリットがあり、各指標を用いる際の運用方法や、組み合わせのあり方などを今後検討する
 この点、効果指標で捉えきれない医療技術の側面(たとえば精神的満足度の向上など)については、評価(appraisal)において勘案することを検討する(p6〜p8参照)(p39〜p50参照)
 
(4)費用については、「公的医療費のみを費用範囲とする」ことを原則とし、公的介護費や生産性損失を含めた分析も可能にすることなどを今後検討する(p9参照)(p39〜p60参照)
 
(5)新技術の費用対効果の比較対象については、「幅広く臨床現場で使用されており、新技術が導入されたときに、もっとも置換わりうると想定されるもの」を原則として今後検討する(p10参照)(p62〜p67参照)
 
(6)効果のデータについては、「エビデンスレベルが高いデータ(たとえばシステマティックレビューから得られたデータなど)を優先する」ことを原則として今後検討する(p10〜p11参照)(p69〜p73参照)(p76参照)
 
(7)効果のデータについては、「診療単価」は診療報酬点数表・薬価基準・材料価格基準を用いる、「回数」は診療ガイドラインをベースにする、こととして今後検討する(p10〜p11参照)(p74〜p76参照)
 
(8)費用対効果評価の活用方法に関しては、現行制度や患者アクセスの確保などに留意しつつ(たとえば、有用な新規抗がん剤の保険適用を妨げないなど)、「保険償還の可否(保険収載するか否か)」や「保険償還価格の決定」について、具体例を用いることを考慮しながら引続き検討する
 結果活用の時期についても合わせて検討する(p11〜p13参照)(p78〜p87参照)
 
 
 この中間的整理案には、一部委員から注文がついている。
 鈴木委員(日医常任理事)は、(3)の効果指標に関し「QALYには多くのデメリットがあり、英国においても近く見直しが予定されていると聞く。そのためドイツでは、別の効果指標として『効率性フロンティア』を導入している。そうした点を中間的整理案に記載すべき」と提案。
 この点、嘉山委員(国立がん研究センター名誉総長)も「英国では抗がん剤の保障導入が非常に遅い。これもQALYのデメリットであろう」と同旨のコメントを行っている。
 
 一方、白川委員(健保連専務理事)は、「今後どのように議論していくのかがよく分からない。具体例を用いて、我が国の医療制度にあてはめるとどうなるのかを議論していくべきであろう。個人的には、医薬品であれば『ここ数年の間に、実際に薬価収載された』もの、医療技術であれば『先進医療から保険収載された』ものを取上げてみてはどうかと考えている」と提案した。
 「具体例をあげて検討すべき」との白川委員提案には、嘉山委員や堀委員(日歯常務理事)も賛同している。
 
 また印南委員(慶應義塾大学総合政策学部教授)は、「今後の検討で重要になるのは『(2-ii)のappraisal』と、『現行の薬価・材料価格制度との整合性』であろう。検討の際には、いつまでに、何を決定するのかをあらかじめ決めておく必要がある。スケジュールを示すべきであろう」と述べている。
 
 さらに安達委員(京都府医師会副会長)は、「どのような効果指標を用いるにしろ、新規医療技術の増分費用効果比(ICER)がどの程度であれば保険収載を認めるのかという点も重要である」としている。
 増分費用効果比(ICER)とは、いわば「新規技術が、既存技術に比べて、どの程度コストパフォーマンスが優れているか」をあらわす指標だ。英国では「ICERが2〜3万ポンドよりも安ければ、費用対効果に優れている」という目安が設定されているという。
 こうした基準値の議論もすべきと安達委員は指摘しているのだ。
 
 
 関原部会長(日本対がん協会常務理事)は、「委員の指摘等を踏まえて修文し、次回会合で確認してほしい」とまとめた。さらに、「スケジュールの重要性が印南委員から指摘された。当初は『26年度改定時での試行的導入を目指す』とされており、この点も含めて検討していきたい」ともコメントしている。

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