[診療報酬] 抗がん剤対象とした先進医療制度見直し、中医協総会が方針了承

[中央社会保険医療協議会 総会(第248回 9/4)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 09月 04日

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 厚生労働省は9月4日に、中医協総会を開催した。
 この日のテーマは、(1)東日本大震災の被災地特例の延長(2)先進医療制度の運用見直し―の大きく2点。
 
 
◆未承認・適応外の抗がん剤、先進医療の運用を大幅緩和
 
 まず、(2)の先進医療制度について見てみよう。
 先進医療制度は、最新の医療技術と保険診療との併用を認める保険外併用療養制度(評価療養)の1つだ。
 この制度は、ドラッグラグやデバイスラグの早期解消に向けた医療保険サイドからのアプローチ手法としても活用されている。
 具体的には次のような仕組みが導入され、従前よりも柔軟に保険外併用療養を認める形となっている。
●海外の実績等から一定の安全性が確認されている抗がん剤で、長期間治験が見込まれない場合には、その抗がん剤を用いた技術を先進医療の対象とする
●先進医療専門家会議と高度医療評価会議を改組し、先進医療会議を設置
●先進医療を実施できる医療機関群を特定し、実施計画書のみの審査で先進医療を実施可能とする
●先進医療におけるデータの質を確保し、薬事承認の効率化を図る
●医療機関の特性に応じて、先進医療に先立つ数例の実績がない場合でも実施を認める
 
 ところで、先ごろまとめられた成長戦略(日本再興戦略)において、ニーズの高い抗がん剤を対象として、「先進医療の審査を大幅に短縮し(現在の6〜7ヵ月から、概ね3ヵ月程度に短縮する)、最先端の医療にも保険との併用療養の可能性を拡大すべき」との方針が盛込まれた。
 この日の中医協総会では、この方針を具体化するための「運用見直し案」が厚労省当局から提示された。その骨格は、(i)個別技術(つまり新たな抗がん剤)および実施医療機関の適否を、あらかじめ学会等の要望を踏まえ先進医療会議で議論する(ii)実施計画の適否は外部の評価機関などで判断する―というもの(p9〜p28参照)。
 
 外部評価機関として厚労省は、「がん治療に高度の知見を有し、実施機関の申請および実施段階での監査を行う機能」を有する医療機関を想定している(p10〜p11参照)。
 外部評価機関には、先進医療(新たな抗がん剤)の実施申請がなされるので、機関内でその申請の是非を審議する「評価委員会」を設置することが必要である。
 評価委員会の中立性を担保するため、厚労省当局は「評価委員会の構成員は、厚労省が指名する」「外部評価機関に所属する構成員は若干名とする」との考え方を提示した(p11参照)。
 
 この評価委員会構成員については、嘉山委員(国立がん研究センター名誉総長)や関原委員(日本対がん協会常務理事)から「外部評価機関のほうが専門家を熟知しているであろう。外部評価機関から推薦を受け、それを承認する形のほうがよいのではないか」との提案があった。この点、厚労省の神田審議官や、保険局医療課の佐々木企画官は、「中立性の担保が重要であり、あえて『指名』としている。ただし、外部評価機関からの推薦等はあるだろうし、実質的には嘉山委員らの提案と似た形になると思う」と説明している。
 
 
 ところで、今回の運用見直しは「抗がん剤」のみが対象となり、他の医療技術等は従来どおりの仕組み(先進医療会議で審議)で評価される。
 この対象となる「抗がん剤」について厚労省は、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で必要性が認められ(a)メーカーに開発要請をしてから1年を経過しても治験に着手されなかった未承認薬・適応外薬(b)開発メーカーの公募後、1年を経過しても申出のない未承認薬―とされた(p11〜p12参照)。
 ただし、今後は「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で必要性が認められた抗がん剤をすべて対象にする方向で検討が進められる(p14参照)。
 
 この点、花井十伍委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は「がん患者からすると1年間を待つのは辛い。すべて1年間待つのではなく、慎重な議論を前提として、なるべく早く新たな抗がん剤が使えるようにしてほしい」と要望している。
 
 
 また、先進医療(新たな抗がん剤を用いた治療)を実施する医療機関群については、その技術等に応じて、次のように実施できる技術を区分けしている(p12〜p13参照)。
●臨床研究中核病院と早期・探索的臨床試験拠点では、すべての技術(未承認薬・適応外薬のいずれも含める)が実施可能となる
●特定機能病院では、技術ごと(抗がん剤ごと)に先進医療会議で実施の可否を決定する(未承認薬・適応外薬のいずれも含める)
●都道府県がん診療連携拠点病院でも、先進医療会議で技術ごとに実施の可否を決定する(ただし、適応外薬に限定する)
 
 委員からは、上記のようにいくつかの意見が出されたが、概ね好意的に厚労省提案を受入れた。とくに嘉山委員は「素晴らしい提案である」と高く評価している。
 森田会長(学習院大法学部教授)は「語句や表現の修正をし、中医協として承認する」ことを確認している。
 
 
 
◆福島県では26年3月まで震災特例措置を延長
 
 (2)の震災特例措置については、厚労省が利用状況(医療機関からの届出状況)を調べたところ「37医療機関が利用している」ことがわかった。ただし、被災3県ごとに復興状況が異なっているため、次のような取扱いとなる(p3〜p8参照)。
(i)福島県の保険医療機関については、届出のうえ、平成26年3月31日までの半年間、特例措置を引続き利用することができる(現在利用していなくとも、緊急に必要になった場合には、届出のうえ特例措置利用が可能)
(ii)その他の都道府県の保険医療機関については、現に特例措置を利用しているところについて、25年10月1日時点で利用していた特例措置のみに限って、届出のうえ、26年3月31日まで利用できる
(iii)特例措置の利用状況を厚労省に報告する
 
 この特例措置延長については、中医協総会で了承されている。
 
 
 
◆機能強化型在支診、24年7月は単独型221・連携型2604が届出
 
 なお、この日は、厚労省当局から「主な施設基準の届出状況等(p29〜p50参照)」「主な選定療養に係る報告状況(p51〜p56参照)」が提示された。
 これは厚労省が毎年公表しているもので、今回は24年7月1日の状況が明らかになっている。気になる項目をピックアップしてみた。
●明細書発行体制等加算は8万2064の診療所が届出を行っている(23年にくらべて8.2%増加)(p29参照)
●新設された有床診療所緩和ケア診療加算は171の診療所が届出ている(p32参照)
●新設された感染防止対策加算は、1(主に大病院)は956医療機関、2(主に中小病院)は2360医療機関が届出ている(p33参照)
●医療機関の後発品使用を評価する後発医薬品使用体制加算は2157医療機関で届出ている(23年に比べて472施設・28%の増加)(p34参照)
●新設された外来リハビリテーション診療料(毎回の医師の診療をせずに、リハ実施を可能とする)は2160病院、1002診療所が届出を行っている(p38参照)
●機能強化型の在支診は単独型221、連携型2604(通常の在支診は1万933)、機能強化型の在支病は単独型138、連携型264(通常の在支病は344)となっている(p39参照)
●大病院(200床以上)の紹介状なし初診患者における特別徴収額(選定療養)は、平均2085円(最低105円、最高8400円)で、1050円〜3150円の病院がほとんどとなっている(p53〜p54参照)

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