[診療報酬] 消費税率8%対応、基本診療料中心に引上げ  消費税分科会

[診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担に関する分科会(第8回 8/28)《厚生労働省》]

平成26年度 診療報酬改定 完全速報 - 2013年 08月 31日

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厚生労働省は8月28日に、診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」を開催した。
 この日は議論の中間整理を行った。もっとも、一部内容については委員から異論が出たが、修正については田中分科会長(慶大大学院教授)に一任されており、修文のうえ、近く中医協総会に報告される見通しだ。

 消費税率が平成26年4月から8%に引上げられた場合、医療機関等が負担している控除対象外消費税も増加、つまり医療機関の負担が増えるため、財政面での手当てが必要となる。
 これまで(平成元年の消費税導入時、9年の消費税率引上げ時)財政面での手当ては「診療報酬プラス改定」でなされており、今般の消費増税でもプラス改定で対応する方針が固まっている。
 この点、病院の建替えやMRI等の機器購入など「高額な投資」に対しては、診療報酬プラス改定とは別途の対応(基金を設け、そこから助成を行うなど)も検討されたが、システム構築等に膨大なコストがかかることなどを理由に分科会では否定されている。

 中間整理案では、これまでの議論を踏まえ、消費税率8%時点では次のような対応を行うことを提言している(p49〜p54参照)。
●本体報酬(p51〜p52参照)
(1)点数の引上げ(上乗せ)を行う項目は、「基本診療料・調剤基本料への上乗せによる対応を中心としつつ、『個別項目』への上乗せを組合わせる形で対応する」ことを基本とする。
(2)具体的には、医科診療所(無床)では「初・再診料」、医科診療所(有床)では「初・再診料、有床診療所入院基本料」、病院では「初・再診料、各種入院料」、歯科では「初・再診料」、調剤では「調剤基本料」に上乗せする
(3)医科診療所と病院の「初・再診料」は同じ点数とする
(4)個別項目の組合わせ方は、医療経済実態調査結果を踏まえて検討する

●薬価・特定保険医療材料価格(p53参照)
(1)改定後価格は、【販売価格の加重平均値(消費税抜きの市場実勢価格×1.08)+(現行価格×調整幅)】とする
(2)消費税対応分が薬価、特定保険医療材料価格に上乗せされている旨の表示を、簡略な方法で行う

●改定財源(p54参照)
 内閣において、消費税率の引上げが物価に与える影響などを勘案し、適切にその財源規模を決定する



 この、中間整理案には、一部分について委員から異論が出された。

 まず、本体報酬のうち(1)の「基本診療料への上乗せによる対応を中心とする」旨の記述に対し、支払側である白川委員(健保連専務理事)から「たしかに、我々も『基本料の引上げを中心とすべき』との意見を述べてきたが、中間整理時点で『中心とする』との記載は踏み込みすぎではないか。医療経済実態調査の結果が間もなく示され、引上げ項目はそれを踏まえて議論することになる。現時点では『中心とする』との記述はすべきでない。『基本料への上乗せと、個別項目引上げを組合わせる』ほどの記述でよいのではないか」とコメント。
 この意見には、同じく支払側の小林委員(全国健康保険協会理事長)や、藤原委員(日本経済団体連合会経済政策本部長)も賛同した。

 これに対し、診療側である今村委員(日医副会長)は「白川委員らの意見はもっともであるが、控除対象外消費税はすべての医療機関や薬局に生じている。公平な対応という意味で『基本料を中心とする』との記述に疑問は感じない」とコメント。
 西澤委員(全日病会長)も同旨の意見を述べている。

 この点、熱い議論にまでは至らなかったが、「『中心』を削除すべき」「いや、残すべき」との応酬が長時間続いた。また、「『基本料を中心とする』との記述は残すが、『医療経済実態調査の結果等を踏まえる』旨を前段に配置することで、白川委員の意図を汲んではどうか」との折衷案が今村委員から投げられたが、議論は収束せず、結果として田中分科会長に一任されることとなった。


 薬価等については、今村委員から「消費税対応分を明示すべき」との要望がなされた。今村委員は、「保険診療は非課税と言いながら、医薬品等については患者が消費税分を負担している。この事実を正確に患者等に伝える必要がある」と指摘。また、「消費税率が引上げられた場合、医療機関と卸業者は医薬品・医療機器についてこれまで以上に厳しい価格交渉をすることになろう。その際、消費税分が明確になっているほうが、交渉が円滑に進む」ともコメントしている。
 しかし、藤原委員は「過去の価格改正の経緯もあり、消費税分を正確に把握することは非常に難しいと聞いている。また、そうした表示をすることが可能かどうかについて財政当局との折衝も必要になってくるのではないか」と述べ、消費税分表示には慎重な考え方を示している。
 このため、修文をするのか否か、また修文するとしてどのような書き方とするかについては田中分科会長と厚労省当局で調整を行うこととなっている。


 また財源確保についても、今村委員から「前回(8月2日)会合で主張したように、消費増税率引上げへの対応に必要な財源を考えるにあたっては、『消費者物価への影響』ではなく『消費税率』を重視すべきと考えている。財源確保に関する内閣への提言においても、『消費税率の引上げが物価に与える影響などを勘案し』という記述は削除すべきである」との要望が行われた。
 堀委員(日歯常務理事)も、この要望に賛意を示している。

 この要望に対し厚労省保険局医療課の竹林保険医療企画調査室長は、「今回の議論は、消費税率引上げによって増加する医療機関の負担にどう対応するかという点がテーマである。医療機関の負担増は、物価の上昇に伴うものであるから、消費者物価を勘案することが適切なのではないかと考えている」旨を説明。
 白川委員はこの説明に納得し「薬価や医療材料価格においても、消費者物価の影響を勘案してはどうか」と述べたが、今村委員らの要望に強く反対はしなかった。

 このため、田中分科会長による修文の中で、今村委員の要望を受入れ、『物価に与える影響などを勘案し』というくだりは削除される公算が強そうだ。



 ところで、中間整理を取りまとめる前提として、「高額投資への対応」についても確認が行われた(p46〜p48参照)。
これは白川委員の主張する「個別項目」と強く関連するテーマだ。
 上述のように、医療機関の建替えや、MRI等の高額機器を購入した場合(高額投資)には、消費税負担も大きくなる。そこで、消費税率引上げへの対応でも高額投資に配慮し、手厚い対応を行うべきではないか、との議論が行われてきた。
 白川委員らは「たとえばMRIやCTの撮影料を引上げることなどで、一定の配慮ができるのではないか」と提案している。

 この点、厚労省当局は(a)高額投資の内容を見ると、建物や医療情報システム、車両など、個別診療報酬項目との対応関係が明確でないものが多い(個別項目に重点対応をすると、医療機関間で不公平が生じる恐れが大きい)(b)高額機器に係る診療報酬(MRI撮影料など)は、技術革新による機器の価格下落等によって引下げられる(p48参照)傾向にある(将来的に、消費税対応のプラス改定分が見えにくくなる)(c)過去の改定(元年時、9年時)においても、CT・MRI等の撮影料に上乗せは行っていない―ことを説明し、慎重姿勢を見せている。

 しかし、委員からは、「多少の不公平が生じるかもしれないが、そこを踏まえてしっかりと議論することが必要であろう。高額投資をした場合の医療機関の消費税負担はとても大きく、そこへの対応を否定すべきではない(鈴木委員:日医常任理事)」、「患者視点からすると、最新の高額なMRIを購入した医療機関で費用負担が少し重くなるというのは合理的である。個別項目での対応も重要である(白川委員)」、「消費税対応で引上げた点数項目が、その後の診療報酬改定で引下げられたとしても、消費税対応をしていないことにはならない。(b)は理由として合理的でない(藤原委員)」などの意見が出され、一定程度、「消費税負担の大きな部分に対する、個別診療報酬項目での対応」を行うことが確認された。
 もっとも、個別項目と基本料との引上げ財源配分や、どの個別項目の引上げを行うかなどは、医療経済実態調査結果を待ち、中医協総会で検討されることになろう。


 なお、厚労省当局からは「医療機関等の設備投資に関する調査結果」の修正版も資料提示された。診療所の調査結果等が追加集計されている(p3〜p45参照)。
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