[精神医療]精神科領域における診療報酬、評価引上げの要望が上げられる
[第3回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会―厚生労働省(H25.8.27)]
精神科医療行政ニュース - 2013年 08月 30日
厚生労働省は8月27日に開催した、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会で、3回目の構成員からのヒアリングを行いました。
まず、公益社団法人日本精神保健福祉士協会会長の柏木一惠氏は、指針作成にあたって、(1)早期退院と地域生活中心の精神保健医療福祉を実現するために、多職種によるチーム医療と地域連携を基本とした精神科医療への転換を図ること、(2)現在の「社会的入院」の解消と新たな「社会的入院」を生み出さないために、居住資源の整備と地域生活支援サービスを担う人材の充実強化を優先的に講じること、などを求めています。
また、診療報酬における要望では、具体的に下記の4点を要望しています。
・ 1年以上在院患者の地域移行を評価する精神科地域移行実施加算2の新設
・ 1年未満在院患者の退院率(残存率)を評価する精神病棟入院基本料初期加算2の新設
・ 精神科継続外来支援・指導料における療養生活環境整備支援加算の単独化
・ 訪問看護ステーションにおける精神保健福祉士の単独訪問の評価
一般社団法人日本作業療法士協会常務理事の香山明美氏は、精神科作業療法の現状を報告したうえで、今後、適切な作業療法の提供を目指していくには、急性期での関わりや個別支援を可能にしてくことや、アウトリーチへの積極的参画、チーム医療・地域移行への評価などの必要性を訴えています。また、医療から地域生活を支える部署へ人員転換していくためには、強力なインセンティブと教育のほか、効率的な連携技術を持つ人材育成が必要と提案しています。
全国精神保健福祉センター長会会長の田邉等氏は、冒頭、「さまざまな精神の健康障害にある人が地域で健康を回復していくためには、地域での問題解決能力を高めることが重要である」と述べています。その上で、具体的な意見として、以下の5つを提案しています。(1)精神科医療の機能分化が地域での具体的な役割分担に反映されるべき(2)依存症や発達障害に対応可能な人材の育成を推進(3)長期入院防止、地域移行促進の業務を入院医療の業務として標準化(4)危機介入の治療プログラムを充実させ、可能な限り入院によらない医療を推進(5)入院医療における患者の人権尊重、権利擁護の推進。
(5)では、保護者制度の問題点を述べています。退院支援のケースワークは、精神科医療の本来業務であるものの、これまでの入院医療では、この業務を遂行する環境が十分でないことを指摘しています。そのうえで、業務を担う人材を確保するためにも、精神保健福祉士など有資格者による業務を診療報酬化するなど、医療の中に組み込んで標準化し、退院後生活環境相談員が機能しやすい環境整備が必要などと訴えています。
公益社団法人日本看護協会常任理事の中板育美氏は、大きく(1)訪問看護ステーションの充実・体制整備(2)保健師・看護師の十分な配置と活用(3)認知症患者への治療・支援の体制整備、について意見陳述しています。
また、平成26年度診療報酬改定において、具体的な要望を掲げています。
・ 「精神科急性期治療病棟入院料」における看護師比率を、一般病床と同等の人員配置(7割以上)へ引き上げ
・ 地域への精神科アウトリーチに対する評価の新設
・ 「複数名精神科訪問看護加算」の算定制限を見直し、看護補助者や精神保健福祉士との同行訪問、30分未満の訪問に対する評価
・ 精神科訪問看護の24時間対応加算の報酬の引き上げ などです。
このほか、特定非営利活動法人ハート in ハートなんぐん市場理事の長野敏宏氏からは、「愛南町における精神科医療の構造変革の実践」が発表され、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会理事の良田かおり氏からは、精神障害者の家族会の意見が述べられました。
良田氏は、「多くの家族が医療の中断を経験しており、病状の悪化時には不安や恐怖心を覚えている」と述べ、家族を支援するシステムの制度導入を訴えています。
このほか資料には、これまでのヒアリング内容を検討、集約した「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針に関する論点の整理」などが提示されています。
なお、次回会合では、初会合から今回までのヒアリング内容の論点整理を行った上で、厚労省当局から、中間とりまとめのたたき台が示される見込みです。