［精神医療］ 精神病患者を地域に戻すための意見、相談窓口や居住系施策の拡充を
[第2回精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会−厚生労働省（H25.8.9）]
精神科医療行政ニュース - 2013年 08月 16日
厚生労働省は8月9日、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会を開催し、初会合に引き続き構成委員からヒアリングを行いました。
千葉県精神科医療センター長の平田豊明氏は、わが国における精神科救急・急性期医療の現状と課題を整理したうえで、精神科救急医療の改革指針案を提示しました。改革指針には、大きく（1）アクセシビリティの向上（2）身体合併症対策の推進（3）救急病棟における医療水準の向上、の3つを掲げています。具体的な内容を見てみると（1）では、電話相談窓口の拡充や、夜休診などの精神科診療所の一次救急参加を、（3）では、全国共通患者データベース（eCODO）の普及などを提案しています。
千葉大学大学院医学研究院精神医学教授の伊豫雅臣氏は、平成24年度に実施した精神科病院を対象とした調査から、重度慢性統合失調症患者への良質かつ適切な医療についての提言をまとめています。長期入院している重度慢性統合失調症患者には、「治療抵抗性統合失調症 (TRS)」の患者が含まれている可能性が高いと指摘。そのうえで、重度慢性統合失調症患者に対して TRS や 「ドパミン過感受性精神病（DSP）」の診断、およびクロザピンや 「修正型電機痙攣療法（mECT）」、DSP治療の適否を判断し、適応者には本人、家族、主治医が安心してそれらの医療を提供できる体制を構築する、としています。また、抗精神病薬のより適切な使用を推進し、再入院予防のための再発早期発見、早期介入の体制を構築することを提案しています。
全国精神障害者地域生活支援協議会代表の伊澤雄一氏は、精神障害者が街での暮らしの社会資源（支援インフラ）として、（1）居住系施策の拡充（2）日中活動系事業に欠けている要素の確保（3）訪問系支援の拡充、を整備してはどうかとしています。（1）では、たとえば、「看護付きホーム」や「ミニ緊急救護施設」など、多様な住まい方の提供により、脱病院を大きく推進する新たな居住支援メニューを開発する必要性を説いています。
日本精神科看護技術協会専務理事の吉川隆博氏は、地域における保健医療福祉サービスの提供を図る必要があるとし、たとえば、精神障害者のニーズに応じて訪問看護が提供できるよう、サービス提供可能な場所の拡大や、地域事業者等の求めに応じ、医療職がサポートできる仕組みづくりが必要と述べています。
全国保健所長会副会長の倉橋俊至氏は、精神障害者に対する医療提供を保健所の立場から現状と課題を分析しています。保健所は、多様な設置形態となっており、自治体の精神保健担当もさまざまな組織となっていることから、「業務は増加したが人員は不十分」と指摘。なかでも、都市部においては、医療資源の偏在等の特有の事情を勘案すべきで、病床の機能分化等によって、偏在がさらに強調され、対応困難な状況になることが危惧されるとしています。精神科クリニック等の地域保健での役割を明確にし、連携を図ることを課題にあげています。
