［メンタルヘルス］ 東日本大震災後に伴う子どもの心の健康ケア、取組内容をとりまとめ
[ 平成24年度非常災害時の子どもの心のケアに関する調査報告書−文部科学省（H25.8.7）]
精神科医療行政ニュース - 2013年 08月 16日
文部科学省は8月7日、平成24年5月に行った「平成24年度非常災害時の子どもの心のケアに関する調査」の結果を公表しました。
この調査は、東日本大震災に伴う子どもの心身の健康状態を的確に把握し、また、子どもの心身の健康状態に応じた行政、学校等の適切な対策を講じる際の基礎資料を得ることを目的に行われました。
調査は、平成23年3月の東北地方太平洋沖地震に係る災害救助法が適応された地域（帰宅困難者対応を除く）に該当する国公私立幼稚園、小学校、中学校、高等学校（全日制のみ）、中等教育学校、特別支援学校の5,075校を対象に行われました。回収率は93.7％で、有効回答数は、校（園）長調査4,569件、学級担任調査33,700件、養護教諭調査：3,408件、スクールカウンセラー調査1,838件、保護者調査335,784件でした。
報告書は、子どもの健康状態や子どもの心の健康問題に関する取組がまとめられています。結果の一部を見てみます。
まず、震災前と異なる現在の子どもの様子について、「震災前と異なる様子が見られるかどうか」を保護者に聞いたところ、「物音に敏感になったり、イライラするようになった」（9.1％）、「災害を思い出すような話題やニュースになると、話題を変えたり、その場から立ち去ろうとする」（6.2％）の割合が高いことが分かりました。また、現在の子どもの様子については、「震災前と異なる様子が見られるかどうか」を保護者に聞いたところ、「よく甘えるようになった」が最も高く10.7％の回答でした。災害等に遭遇した後に現われることが多い反応、PTSDについては、福島県、宮城県で高い傾向が見られますが、その他の地域でも一定数が見られることが報告されています。
一方、学級担任が各学級で把握している子どもの様子も調査しています。ここでは、子どもに現れやすいストレス症状等として、（1）食欲の異常（不振または過剰）（2）睡眠不足になっている（3）頭痛、腹痛、吐き気、下痢や便秘、頻尿のいずれかがある（4）持病（ぜん息やアトピー性皮膚炎等）が悪化した（5）体のだるさ、疲労感を訴える（6）元気がない、意欲が低下した（7）あまり話さなくなった、の7項目を設定。災害等に遭遇した後に現れることが多い反応として、（1）災害のことを突然思い出して動揺する（2）災害を連想させる事柄や場面に出会うと、あわてて話題を変えたり、その場から立ち去ろうとする（3）喜怒哀楽がなくなり、無表情になった（4）些細な音でビクッとしたり、過剰に警戒するようになった、の4項目を設定し調査しています。これに基づくと、「現在、震災の影響と思われる、子どもに現れやすいストレス症状等（上記の７項目）が１つでも見られる子どもがいる」と回答した学級担任の割合は、高等学校6.2％、中学校5.1％、小学校4.5％、特別支援学校4.0％、幼稚園3.8％。「災害等に遭遇した後に現れることが多い反応（上記の４項目）が１つでも見られる子どもがいる」と回答した学級担任の割合は、特別支援学校11.8％、幼稚園11.2％、小学校6.7％、中学校4.9％、高等学校4.2％でした。
次に、震災後の心身の健康問題への対応を見てみます（校（園）長）。子どもの心身の健康のため、震災後の学校の取組を聞いたところ、最も多いのが「子どもの心身の健康状態について、教職員で情報共有する」の95.6％、次いで、「子どもの心身の健康状態を把握する」95.2％、「心のケアの対応方針決定と共通理解を図る」の83.2％でした。一方、「子どもの心のケアに対する学校の方針・具体的な対応について保護者説明会を実施する」は36.9％、「臨時の環境衛生検査を実施する」は42.4％、「心のケアに関わる校内研修会を実施する」は56.8％と、他項目に比べ、比較的少ない結果でした。
同様に学級担任調査の結果を見てみると、「保護者及び子どもが相談しやすい人間関係に努めている」と「先入観にとらわれず、様々な視点から子どもを見ている」が95.2％で最も多く、「問題のある子どもだけでなく、全ての子どもについて理解する」が95.1％、「心身の健康問題の早期発見のために、健康観察をする」が92.7％、「養護教諭をはじめ関係者と連携しながら組織的に対応している」が88.5％と続きます。このほか、「メンタルヘルスに関する基本的な知識を改めて修得する」については44.1％という状況でした。
最後にスクールカウンセラーの来校頻度を見てみると、「週に１回」が47.1％と最も高い割合を占めていますが、2回以降の来院頻度は極端に低くなっています。震災後のスクールカウンセラーの活動（複数回答）では、「子どもの個別面接」が58.4％、「教職員への助言」が57.5％、「保護者の個別面接」が42.8％などとなっています。
