［精神医療］ 精神病床の機能分化と診療報酬における評価を求める意見が述べられる
[ 精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会−厚生労働省（H25.7.26）]
精神科医療行政ニュース - 2013年 08月 02日
厚生労働省は7月26日、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会の初会合を開催しました。この検討会は、6月26日に閉幕した第183 回通常国会で成立した「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」、いわゆる「精神保健福祉法」により、新たに策定することとされた『精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針』の記載内容等について検討するために設けられたものです。
主な検討内容は、（1）精神病床の機能分化（2）精神障害者の居宅等における保健医療サービスおよび福祉サービスの提供（3）精神障害者に対する医療の提供に当たっての医師、看護師その他の医療従事者と精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者との連携（4）その他の良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保、に関する事項などです。
初会合となったこの日は、厚労省当局から、精神障害者の医療の提供の確保に関するこれまでの検討内容や現状が報告されたほか、構成委員からヒアリング等が行われました。
まず、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター社会精神保健研究部長の伊藤弘人氏は、総合病院精神科の縮小傾向を指摘し、機能強化への対策や診療報酬を含めた精神科医療の変革を推進するための必須要素を提示。具体的には、精神病棟の居住系施設への転換を提案しています。
次に、公益社団法人日本精神科病院協会副会長の河��建人氏は、指針策定に当たっては、精神病床の機能分化を目指すことができる実効性のある指針とすべきとした上で、（a）単に期間だけではなく、疾病特性や状態像に応じた急性・慢性の議論が必要（b）人材や財源を効率的に配分し、地域移行を進めるためにも機能分化は段階的に行うべき、と述べています。
日本総合病院精神医学会監事の佐藤茂樹氏は、5疾病5事業時代の総合病院精神科の役割について解説しています。なかでも、総合病院における診療報酬について、「一般病棟入院基本料と精神病棟入院基本料に分かれていること自体が不合理」と指摘。総合病院では、精神科病棟も一般病棟入院基本料を算定できるようにすべきと主張しています。また、総合病院精神が充実すれば、（a）一般救急と精神科救急の乖離が解消されるようになる（b）精神科医療の専門性が高まり、質の高い精神科医療が提供できるようになり、国民の精神科医療に対する信頼性が増すようになる、との見解を示しています。
公益社団法人日本精神神経診療所協会理事の田川精二氏は、改正精神保健福祉法において、保護者規定（保護者制度の廃止）がはずれ、家族の義務・責任が軽くなったことは喜ばしいとし、さらに、「退院後生活環境相談員」の設置に一定の評価を示しています。一方で、精神障害者の就労支援等において、精神科医療機関の精神保健福祉士などコメディカルスタッフは大変大きな役割を果たしているものの、十分評価されていないことを指摘しています。
なお、同検討会では、12月中を目処に指針案を取りまとめる方針です。
また、「障害者の地域生活の推進に関する検討会」（同日に初会合を開催）との取りまとめ内容と、障害者支援区分や地域移行支援の対象拡大、基本指針の改正等について、秋から年末にかけて議論をすすめ、平成26年4月1日から改正精神保健福祉法を施行する運びです。
